奥 新一郎様と共に過ごして

この夏、奥 新一郎様が癌と戦い抜きこの世を去りました。
ユニットの職員から、奥様の思い出を寄せてもらいました。

 

最後の最後まで自分らしさを貫き通す、芯の強く優しいご利用者様でした。
自分は、今年の4月から移動となり3-4ユニットでの勤務となりました。最初は私の関わりに対し、不安があったり(慣れた職員ではない為、細かい事もいちいち職員に説明しなくてはならない)話がはずまない事もありました。
しかし、1ヶ月、2ヶ月と過ぎるにつれて、ご家族のことや昔旅行されていた楽しい思い出話もして下さるようになり、一番嬉しかったのが毎日退勤時に「明日は休みか?あんまり来ないと、給料出ないってよ。」と、自分が出勤するかどうかを気にして下さり、頼りにしてもらえるようになっていたということです。
奥様の体調が悪くなり、あまり起きれない状態になってきてからも、お部屋でご家族の写真を見て楽しそうにお話して下さる奥様との関わりの時間は、なかでも忘れることの出来ない自分の大切な思い出であり、財産です。
奥様、奥様の息子様をはじめ、ご家族の方にも支えていただき、3-4ユニットで元気に働けている今の自分がいます。
<西より>

 

えびな北高齢者施設が開設してすぐに奥様が入所されました。凄い明るくて話すのが好きな方だなっていうのが第一印象です。一緒にいるこちらまでも楽しくなるようなそんな方でした。
3階4ユニットで唯一「大浦君」と呼んでくれたご利用者が奥様でした。私の業務中に「1人でやっているのか。大変だな。」などと声をかけてくださったり、休み明けで出勤すると「なんだ。しばらくいなかったじゃん」と声をかけてくださったりと奥様の言葉や笑顔に元気づけられる時もありました。
入所時は食べ物をよく食べて元気がありましたが、徐々に食欲がなくなり1口、2口程度しか食べられなくなった姿を見ている時は正直つらかったです。しかし、職員側は辛い顔せずいかに奥様と関われるかを考え対応していきました。奥様の最期を見届けられなかったのが凄く心残りです。
奥様の出会えたこと、奥様のご家族に出会えたこと、これは何かの縁だと思うし感謝だと思います。
<大浦より>

 

私が以前勤めていた「えびな南高齢者施設」で勤務していた時、奥 新一郎様も南のショートをご利用されていました。その時は階が(フロアー)違った為、直接関わりを持つことはありませんでした。
昨年の6月にえびな北が開所され、私が担当するユニットに奥様が入所されました。
始めのうちは慣れない職員・ユニット内に1人しかいない職員への不満や不安があったと思います。急がしそうにしている職員へ冗談を言い、職員を笑顔にしてくれたのが奥様でした。いつも明るく、笑顔で何より人の事を気にされ周りに気を遣っていたと感じます。
「あっちをやってからでいいから」「そっちはもう終わったのか?」等自分より他人を優先されるとても優しいお方でした。
業務中、時間があるとよく奥様のお部屋へ行き、一緒にTVを見たり昔の話をしたりと・・・
御家族様からは昔とても怖い父親だった…と聞いていましたが、職員へはいつも優しく色々な事を教えてくれ、こちらが介護をするプロなのに奥様から人との関わりや気配りなど色々な事を学ばせてもらいました。
病気の事はご本人へ伝えないでいくという事でご家族様始め、職員も関わっていましたが、最後の方は御本人様も感づいていながら、職員へ何も言わない様にしていたと思いました。
痛い時・辛い時にも弱音は吐かず我慢強く・・・人間として、1人の男性として
「奥 新一郎」という男性は私を成長させてくれた大きな存在です。
今の世の中の男性は弱くて便りが無いと言われている中、奥様はとても頼りになり強い男性だったと私は思います。
御本人様・御家族様も職員への不満や不安もあった中、最後まで職員への気遣いをして下さり感謝の気持ちで一杯です。
奥 新一郎さん、本当にありがとう。
<杉浦より>

 

施設に入所され1年2カ月。入所前には癌で手術を受けていました。ご本人は、病名を知らされていませんでしたが、察していたと思われるご様子がありました。
最期まで痛みや辛さを口にせず、笑顔を絶やさず、お子様方、お孫様方の愛情の中で過ごされました。
奥新一郎さまは、ご自分の決意「最期まで施設で過ごす。病院へは行かない。」を貫きとおしました。
ご家族の心の葛藤は計り知れず、でもお父様の気持ちに寄り添い一生懸命支え切りました。
ご長男様は、仕事の合間に面会に来られ、少しでもお父様にしてあげられることを考え実践されました。外出・外泊や、すでに他界されたお母様の法要をお父様が無くなる数日前に執り行いお父様を安心させることができました。
そのような経過を見届けるように、静かに穏やかに旅立ちました。その表情は満足感に満ち溢れるほほ笑みのお顔でした。
そのお顔を見て、ご家族も私たち職員も涙と笑顔で「くしゃくしゃ」でした。
生きる。生き抜くことって素晴らしい。その場にいた者すべてが感じたことです。
奥 新一郎様は、天国で先に待っていた恋女房に会い、仲良くラブラブに過ごしていることでしょう。
ご家族様へ
この機会をお許しいただきありがとうございました。
お父様には「生きること」についてたくさんのことを考えさせられました。また、ご家族の深い愛情に触れ、真実の家族の絆を知りました。
最期までえびな北高齢者施設で過ごしていただけたことが本当に嬉しく思います。まだまだ、足りないことばかりでご迷惑もおかけしました。それでも、施設で過ごすことを、お父様もご家族様も選んでくださいました。私たちの力になりました。育てていただいてありがとうございました。
これからも、多くの方々を支えていくために奥様に教えていただいたことに、さらに磨きをかけていきます。
遊びに来てくださいね。お父様のご友人たちも待っています。
<副所長 菅原>
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